地獄の階段、極楽への階段、堂倉谷奥ノ右俣遡行。

渓谷の名称
堂倉谷奥ノ右俣
山域(ピーク)
台高(日出ヶ岳)
渓谷の概要
【堂倉谷】 宮川の本流であり全国的に見ても屈指の渓谷美を誇る大杉渓谷の源流部だ。優美かつ豪快な渓相は本流遡行ならではのもので遡行者に深い感動を与えるだろう。難度は水量次第だが通常ならそれ程の困難もなく是非訪れてもらいたい秀渓だ。
【奥ノ右俣】 日出ヶ岳の南側コル(正木峠)から堂倉谷本流に流れる支流の一つで概要としては前半の廊下と後半のゴーロに分けられる。初級向きとするガイド本を見受けるがこの谷は初級者には難しいかもしれない、25M大滝の右岸巻きはかなり悪いし全体的に地形が厳しくルート取りを間違うと詰んでしまう可能性がある。山や地形に対する見極めがあってこそ楽しめる谷だと思う。
コースタイム
一日目
【大台ビジターセンター】 6:30
【日出ヶ岳】 7:10
【堂倉滝】 10:00
【アザミ谷出合い】 12:15
【幕営地(Co1020m付近)】 15:00
二日目
【幕営地(Co1020m付近】 8:00
【1058m二俣】 8:55
【25M大滝下】 10:10
【25M大滝上】 11:25
【正木峠】 14:30
【大台ビジターセンター】 15:15
ポイント
【★★★☆☆(沢3級-)】 堂倉谷本流は水量次第だが10M斜瀑の左岸をへつる時にロープを出すくらいでそれ程悪い箇所もなく雄大な遡行を満喫できる。奥ノ右俣、25M大滝の右岸巻きは側壁と樹林帯との境目くらいから岩壁を縫うように登るが相当悪く的確なライン取りが求められる。この谷は全体的に両岸の壁が発達していてエスケープは困難、入谷したら抜け切るより他はない。
下 山
【★★☆☆☆(登山道あり)】 下山ではないが初日の日出ヶ岳から堂倉滝への下りが鬼。
装 備
一般遡行装備必携、ロープも必携。中間支点は概ね残置や立ち木から取れるが登攀具も持参した方が無難だろう。
お勧め度
★★★☆☆
参加人数
2人
所要時間
一泊二日
天候
晴れのち曇り
遡行日時
2016/08/12-13
地形図
大台ヶ原山・大杉渓谷
主な地質
砂岩が主体
遡行図
その他情報
《フリクション情報》:滑りやすい 《ヒル情報》:見なかった 《温泉》:かもきみの湯(600円) 《その他》:堂倉谷沿いの林道は車の通行も全く支障がないくらいに整備されてると思ってたら前から軽トラが来た。一般車は通行可能なのだろうか?。


【沢の王道】 

お盆の遡行は堂倉谷になった。
最近沢の名前を憶えてきたラビオ君は有名処を押したがる、
私は二回目なんで、じゃあ本谷じゃなく奥ノ右俣でお願いします。

実はこの谷、初日の激下りで膝を痛めて辛かった記憶がある。
なのでずっと却下していたのだ。
もう二度と行くまいと思っていたが何時もマイナー谷に付き合ってもらっているし、
たまにはリクエストにもこたえないね(^_^)。

・一日目

【大台ビジターセンター(6:30)】 

前夜にも関わらず大台の駐車場は半分くらい埋まってる。
朝にはほぼ満車状態。
準備を整えて6時半出発、
久々の泊装備に足取りは重い。



正木峠から見えた雲海が美しい

正木峠から見えた雲海が美しい。
喘ぎながら階段を登って日出ヶ岳が7時過ぎ、
ここから堂倉滝まで延々の激下りだ。



日出ヶ岳は今日も快晴

この下りはコンクリート製?の丸太みたいなのが埋めてあって階段状、
しかしそれがフェルトだと滑る滑る。

前はこんなの無かったと思うけど足に変な負担が来て速攻膝が痛くなった。
たぶん土砂流出の防止策なんやろうけど、
私にとってはまさに地獄の階段や・・・(涙)。

【堂倉滝(10:00)】 

堂倉滝には10時頃着いた。
今日の水量はちょっと少なめだと思う。
ここで沢装備を整えた。



これぞ滝って感じの名瀑、堂倉滝

下に取水ダムを見ながら下流側に進んで次の吊り橋手前から巻き道に入る。
階段と鎖で整備された道を喘ぎ登ってモノレール軌道へ、
少し進んだルンゼに切れそうなFIXが張ってありこれを下った。

降り立った場所はナメが広がる桃源郷、
前方には大滝が見えている。



堂倉滝の上は沢の桃源郷

7M滝の釜をひと泳ぎして25M大滝の前に立つ、
前よりは水量少ないがそれでも迫力のある滝だ。
この豪快な景色にラビオ君も感動したみたい。

突破は左岸の巻き道から、
赤テープとトラロープが設置されててまるで普通の登山道、
でもそれって沢の巻き道にいる?、
と言うかここまで来れた人がこれを必要とするんやろか?。



25M大滝、突破は左岸の巻き道を伝う

落差は無いが不釣り合いに大きい釜が続く、
この辺りを中七ツ釜と呼ぶらしい。
エメラルドグリーンとエメラルドブルーの中間くらいな水色が綺麗やね。

やがて大釜に10M斜瀑、
通常は左岸をへつり抜けるが泳げば右岸側の方が登りやすそう。



10M斜瀑、通常は左岸をへつり抜ける

とりあえず定番の左岸抜けで、
残置が多いから安心やけどかなり錆びてるしそろそろ限界かも?。

ラビオ君も無事に通過、
するとすぐ後ろに後続パーティが、
この方達全員フリーソロで抜けて来た。
かなり高速なのでもちろん先に行ってもらう。



残置類が多くて安心やけど結構錆び錆びで限界も近い?

次の3M滝で先行のパーティが詰まってる。
そういえば前来たときここで懸垂したのを思い出した。

左岸から巻いて滝上に、
今回は懸垂せずにスラブ面を慎重に降りた。

谷は巨岩のゴーロ帯、
一瞬「めんどくさそう・・・」と思うが概ね右岸側の端っこから抜けられる。

【アザミ谷出合い(12:15)】 

アザミ谷出合いを過ぎると行合の廊下に2段8M滝、
左岸の岩棚を登った。



2段8M滝は左岸の岩棚から這い上がる

すると谷に大穴が空いたような特異な景観、
有名な奥七ツ釜やね。

右岸側が斜瀑になっているので通過は容易、
今日は水が少なくて穏やかやけど、
以前この釜に巻き込まれて上がれなくなったって話を聞いた事がある。



有名な奥七ツ釜、右岸が斜瀑で通過は容易

左から10M斜瀑が流れ込み右岸の笹藪から巻き登る。



右岸の笹藪から巻き登る

少し穏やかになって美しい釜を見ながら快適遡行、
やっぱり膝も痛いしそろそろ泊まり場を探さねば・・・。



美しい流れを楽しみながら快適遡行が続く

やがて前方に無粋な堰堤、
右岸から巻いてそのまま林道まで上がる。
時間的に谷通しでも行けたけど膝が痛いのでもう勘弁で(^^;。

暫く林道を歩いて橋の袂から遡行再開、
するとすぐに絶好の台地発見。

何が絶好って豊富な薪に湧水まで得られる別天地、
飲んでみるとさらっと系でウマイ、
文句なしで今宵のお宿となった。

【幕営地(15:00)】 

今回より新しいお宿、
メッシュテントは真夏に快適やね。
広々空間に自立型Wウォールで1.2kg、
最近のテントは軽くなったもんや。

ただ残念なのは夕方からまさかの雨・・・、
それでも何とか目的は達したけど。



新しいお宿、真夏はメッシュテントが快適やね

・二日目

【幕営地(8:00)】 

真夏やのに朝は結構冷えた。
冷たい靴下を履いて8時出発、
昨日の疲労がまだ残っていて足が鉛のように重い。

ミネコシ谷出合いを過ぎて堰堤を右岸から越えると二俣に到着、
本谷は左だが右俣へと入る。



堰堤からCo1058m二俣付近まではド河原

【Co1058m二俣(8:55)】 

暫くは普通のゴーロ、
次の二俣で右手から滝を落とす奥ノ右俣へと入った。

最初の2段8M滝は左手から釜をへつって直登、
昨日の豪快な景色とは違って今日は鬱蒼感満載だ。



最初の2段8M滝は直登で!

続く6M滝は釜を泳ぐのが億劫で右岸巻き。



6M滝は右岸巻き

次の8M滝もちょっと無理、
この辺り両岸高くて中々の廊下やわ。
幸い右岸にいい具合のバンドがあって滝上へと誘う。



8M滝も右岸から、この辺りは中々の廊下です

廊下真っ只中の6M滝は普通に巻くと見えない、
一度谷に戻ってまた巻き返す。



廊下真っ只中の6M滝

【25M大滝下(10:10)】

前方に黒く大きな壁が見えてきた。
近づくと細流の滝が落ちている。
これが記録には40M滝とあるこの谷最大の滝だろう。
ただ実際の落差は25Mと言ったところ。

暫し休憩して突破を試案する。
可能性としては右岸だがかなり厳しいかもしれない。

とりあえず右岸のルンゼを一段上がって側壁と樹林帯の境目辺りから攻略開始、
立ち木から中間支点は得られるものの殆ど岩登りに近くて相当悪い。
更に生い茂るアザミの痛いこと痛いこと、
30mロープめいっぱい伸ばして何とかピッチを切った。

そして後続確保、
下から怖い怖いと聞こえてくる。
怖いってTRやん(^^;。

次のピッチをやや左上気味に登るとバンドを見付けて折り返す。
もう滝の高さは越えているはずだが・・・、
うまい具合にバンドは繋がっていて滝上に導かれた。

正直なところこの巻きはかなり悪かった。
巻きと言うより登攀に近い面もあるし、
岩の隙間を縫って登るからルート取りを間違うと詰んでしまう恐れがある。
ラインの見極めが肝心なところだ。



25M大滝、右岸の壁を縫って巻き上がるがかなり悪い

【25M大滝上(11:25)】

これで様子が一変、
少し明るくなって自然林の森が広がった。

流木の刺さる5M滝は狭いので空荷で突破、
重荷から解放されて登ると身体が嘘のように軽い、
ラビオ君も難なく登ってきた。



流木刺さる5M滝は空荷になって突破

水が切れてゴーロの急登が続く、
苦しい、膝が痛い、ふくらはぎが攣って来た・・・。

標高1300mくらいだしまだこれがコンタ300m以上も続くのか、
でも登らないと進まない、
上は遊歩道だからきっと華やか山ガール達がわんさか居るだろう。

苦しいけど極楽への階段と思って耐えしのぶ。



詰めは苦しさは最大級

それにしてもこの谷は地形が厳しく両岸はずっと壁が続いてる。
こりゃ何かあってもエスケープは容易ではないな、
ここから脱出するには詰め登るしかない訳だ。

だがこの厳しい場面こそ自然の中にいる自分を実感できるのかもしれない、
なんと言うか生きている感触と言うか、
生きるために何かをしないといけないから生きていることが判る。

そんな事を漠然と思いながら一歩一歩登った。
まあ何か考えてないと全身バキバキで辛いからなんやけど(^^;。

源頭では同じような枝谷が幾つか出てきてこれも判断に迷うところ。
踏み跡も交錯してるし皆同じ思いをしてるのだろう。

どうにか笹斜面になるとようやく傾斜も緩んで展望台が見える。
昨日通った正木峠の展望台だ。

【正木峠(14:30)】 

ふーっ、やっとや。



笹斜面になるとようやく正木峠の展望台が・・・

予想通り展望台は華やかな皆さんで賑わってる。
それに引き換え私たちはドロドロの沢装束、
足取りは重いけどハイカーさん達からは浮いた感じで15時15分駐車場へと戻り着いた。

お疲れさまでした。

【難しさってなんだろう】 

堂倉谷は二回目やったけどやっぱ豪快で素晴らしいですね。
あの長い下山が無ければほんま最高なんやけど・・・。

奥ノ右俣は初級向きとするガイドを見るけど初級やと厳しい気がします。
25M滝の右岸巻きは立ち木から中間支点は取れるけど殆ど岩登りの傾斜、
ラインを読み違えると詰んでしまう可能性があるし・・・。

詰めにしても地形が厳しく両岸の壁が源頭まで続いて逃げ場がない、
的確なルート取りと地形を読む力が試されます。

谷の難度は登攀だけじゃない、
やはり全体的に見る必要があると思うんやけどどうでしょう。



遡行図




*遡行難度や下山難度のグレード目安、サイトの観覧方法については「初めてお越しの方へ」をご覧下さい。

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