神様が創った美術館、念願の奥ノ平谷遡行!

渓谷の名称
奥ノ平谷
山域(ピーク)
台高(千石山)
渓谷の概要
大渓谷がひしめく蓮渓谷にあって最強最美の谷として名を馳せる奥ノ平谷、下流部から中流部にかけて延々と続く廊下帯は沢屋必見だが技術的に難しい箇所が多く一筋縄では遡行させてもらえない。特に魚止滝からほら貝ノ滝にかけては『神の創った美術館』と思えるほどに美しい場所だ。上流部は一転して今までの険悪さが嘘のように気持ちの良い台地が広がり絶好の一夜を提供してくれる。泳ぎ、へつり、登攀、巻き、そして最高の天場、沢の魅力が全てが詰まった最上級の渓である。
コースタイム
一日目
【千石林道ゲート前】 07:50
【魚止滝】 08:40
【法螺貝滝】 10:15
【佐助滝】 13:05
【大石滝】 15:30
【2段25M滝】 16:20
【Co1070m付近幕営地】 17:05
二日目
【Co1070m付近幕営地】 08:25
【千石山】 09:40
【笹ヶ峰】 10:25
【喜平小屋谷出合い】 11:55
【千石林道ゲート前】 13:45
ポイント
【★★★★☆(沢3級+)】 ポイントがあり過ぎて書ききれないが、魚止滝ゴルジュの右岸巻きは残置FIXを頼りに数メートル登って踏み跡に出る。ほら貝ノ滝のゴルジュは左岸、岩の隙間を抜けてテラスに登り、そこから投げ縄とショルダーで壁の上に這い上がる。サスケ滝は右岸の枝谷から巻けば落ち口にドンピシャで行ける。黒滝谷出合いにある大石滝は直進するルンゼに入って5M滝を直登、そこから折り返して上に続くゴルジュも一緒に巻いた。最後の2段25M滝は左岸を巻くがなかなか壁が切れず大巻きになった。それ意外にもポイントと見所満載だが多すぎてあまり記憶に残ってません。
下 山
【★★★☆☆(要読図力)】 下山は千石山(奥ノ迷峰)から縦走路を伝い笹ヶ峰(P1367m)で東に派生する尾根へと入る。尾根にはテープ類が巻かれているが踏み跡が交錯していてルートを外しやすく確実な読図力が要求されるところ。逆に言えばテープ類が無くなれば主尾根を外している可能性が高い、テープと薄い踏み跡を頼りにどんどん下っていくと喜平小屋谷と赤クラ滝谷の二俣に降り着いた。そこから千石林道に登り返して駐車地までは1時間半ほどの道のりだ。
装 備
一般遡行装備必携、ロープも必携。ロープは9mm×40mを一本と8mm×10mを各自で持参したが8mm×10mで間に合う場面の方が多かった。その他ではハーケン、ハンマー、カム類の登攀装備も持参した。
お勧め度
★★★★★
参加人数
3人
所要時間
一泊二日
天候
曇り / 雨のち曇り
遡行日時
2013/09/07-08
地形図
七日市
写真室
無し
遡行図
その他情報
《フリクション情報》:良好 《ヒル情報》:多数生息 《温泉》:奥香肌温泉スメール(700円) 《その他》:蓮界隈はヒルが多く三箇所も食われた。巻きに入るとだいたい居るから気になる人は要対策。


・一日目

【いよいよ念願の谷へ】 

今年の夏は記録的な猛暑で沢にはもって来いな日が多かった。
しかし8月終盤の前線通過をきっかけに突然夏が終わってしまう。
そうすると今度は一転雨ばかり、いったいなんやねん・・・

9月の初っ端に奥ノ平谷の計画を立ててただけに何とか晴れて欲しいけど、
ここ数日だけでも200mmくらい降ってて青田の水量計がヤバイ事になってるそうだ。

うーん・・・、半ば諦めモードやったけどヒロッチCLから「予定通り行く!」との指令が。
それに台高の主稜線は人気の山なんでもしかしたら山ガールに出会える可能性があるらしい。

山ガールに出会えるなら仕方ない、こりゃ雨でも増水でも行くしかない!。

メンバーはひろっちCLにゴーヤん、そして私の3人。
早朝4時半に迎えに来てもらって蓮を目指す。
南阪奈から高田バイパス経由なら蓮まで2時間半、便利になったもんや!。
蓮川沿いの林道がダートになると結構荒れているが何とか入れて千石林道のゲート近くに駐車、ゲート前には既に2台止まっている。

【千石林道ゲート前(7:50)】 



さあ楽しい二日間の始まりや!

準備を整えて出発は7時50分、ゲート横の小道から出合いに降りるともう靴の上でヒルが踊ってる。
蓮界隈はどの谷に入ってもヒルが多い、天気もこんなんやし今日は気をつけねば・・・。

奥ノ平谷に入って最初は平凡な河原だけど小滝が出だすと渓谷らしくなってきた。
苔の浸かり具合を見てるとやはり通常より10cmくらい水量多い感じがする。

最初の滝らしい滝は『初音滝5M』。(たぶん地形図で仙人滝と書いてある地点?)
左岸大岩の下を四つん這いで進むが荷物が邪魔やーっ。



最初の滝は初音滝、左岸大岩の隙間に潜り込む

ここから渓相が一転、ゴルジュっぽくなって何かありそうな気配。
うねうねする廊下を左に回り込むと大釜に落ちる3M滝。
これは凄い、河原では「まあ行けるか」って感じの水量もゴルジュに集中すると物凄い迫力だ。



ゴルジュの3M滝、釜を泳いで流芯の左手を登る

ここはヒロッチさんがロープを引いて突っ込み流芯の左手を登る。
後続はロープに引かれて楽勝モードだが取り付き付近の水圧が凄かった。

【魚止滝(8:40)】 

すると目の前には更に凄いゴルジュ滝、これが『魚止滝』かな!?。
高さは6Mくらいだが、なるほどこの水勢じゃ魚は登れないやろなぁ。
この滝は左手直登の記録があるんやけど今日の水量じゃちょっと無理、
時間の加減もあるしあっさり引き下がる。



魚止滝6Mは完全はゴルジュ滝、今日は無理な感じ・・・

先の3M滝の手前まで戻って右岸に付けられた残置FIXを利用して4Mほど登る。
そこから若干バック気味に岩を回り込むと巻き道に出た。

魚止滝の上もゴルジュが続いてて2段8M滝が物凄い迫力で落ちる。
谷中はとうてい無理って思ったけどダメ元で突っ込んでみると左岸ギリギリをへつれてラッキー!。



2段8M滝、物凄い迫力だが左岸をギリギリへつり抜けた

少し進んで左岸側壁の20M滝を見て左折すると更に強烈なゴルジュになる。
これが『仙人滝』か、斜めに切れ込んだゴルジュは両岸1mくらいに狭まって絶句する美しさだ。
これこそ地球が創った奇跡、『神様の美術館』と言うべき絶景だろう。



仙人滝のゴルジュ、まさに神様が創った美術館

ここもひろっちさんが先頭切って突っ込むが上部で流芯を右岸に渡る必要があるみたい、
しかし触れたら一瞬で吹っ飛ばされそうな水量では流石に難渋している。
かなり粘ってたけど、時間の事もあるし軟弱な私は「巻きましょう」と言ってしまう。
今日は夕方から雨予報、出来れば今日中に悪い箇所を全部抜けてしまいたい。

巻きはゴルジュの入り口まで戻って左岸のブッシュに取り付く、
すると側壁の上にはバンドがあって容易に導かれた。

【法螺貝滝(10:15)】 

谷は一旦開けるけど樋状6M滝から両岸また立って来る。
ゴルジュの中はS字に屈曲して異様な滝が現れた。
これが法螺貝滝だろう、8M滝の前面に岩が張り出してまさに法螺貝の表現がピッタリだ。

蓮界隈は絵馬小屋の五ヶ所滝、野江股の鶴小屋滝、宮ノ谷の犬飛峡、どの谷にも奇観と呼べる場所がある。



法螺貝滝8Mの奇観、少し戻って左岸の岩を抜けてからテラスへ

直登は無理そうで少し戻った左岸、岩の隙間を越えた裏側を登って小テラスに出る。
しかしまだ3mほどの垂壁があり、これがまたのっぺりしててフリーの突破は絶望的。

うーん、ここは投げ縄で行こう。

ひろっちさん案で一人3投まで、ゴーヤん、私と失敗する中、ヒロッチさんが決めた。
その投げ縄支点をトップロープ状態にして壁の上に這い上がる。
このあるもん何でも使って突破を考えるのも沢の魅力の一つやね!。
谷に戻るのは6mの懸垂下降、この懸垂は落ち口の真上に降りるから振られの処理がやっかいだ。

これでとりあえず下部ゴルジュは片付いた感じかな。
一息ついて手袋を脱ぐと右手の甲にヒルが3匹も張り付いてる。
また手袋の中かいな・・・、しかも一匹はけっこう吸ってるし(>_<)。
手の甲は完全に盲点やしヤツらも賢くなってるんやろか!?。

で気を取り直して暫く進めば泳がないと越えれない渕が出てきた。
でもさっきのゴルジュ突破で身体は冷え冷え、出来れば今は泳ぎたくない。
左岸を巻き気味に行くとその先が『鎌滝』だった。



鎌滝はなかなかかっこいい、左岸を容易に巻く

鎌滝は深く抉られた岩溝にダイブするかっこいい滝、
間近で見たいけど降りるの億劫でそのまま左岸を巻いてしまう。
この巻きは容易。



末広がりな7M滝、こいつも美しい滝やね

鎌滝の上は少し開けて右岸から金谷が合流する。
末広がりな7M滝を越えて傾斜のあるゴーロを登って行くと豪快な20M滝が現れた。



豪快な20M滝、左岸から巻き上がる

この滝は右岸の滝側を登れるそうだがちょっと時間がかかりそう。
少し押し気味だしここも巻く事になった。
左岸の斜面から立ち木を頼りに巻いて行く、だいぶ登って行くと明瞭な踏み跡に出た。
テープ類もあるしどうやらこれが出合いから佐助滝まで続く『摂津道』と呼ばれた山道のようだ。
途中、切れた斜面もあったけどこの道を利用して滝上へと進む。

【佐助滝(13:05)】 



奥ノ平の盟主、佐助滝。右岸枝谷から巻くが微妙な斜面もある

前方にはもう次の大滝が見えている。『佐助滝』だ。
落差は35Mくらい、奥ノ平で一番の巨瀑だけあって流石に素晴らしい。
それにしてもガイド本やネットの写真で見た佐助滝は逆くの字のルンゼが流芯で正面は簾状な感じだけど、
今日の佐助は正面からもゴーゴーと水が流れてまるで別の滝みたいや。

通常はその逆くの字ルンゼを登るみたいだがこんな水量じゃ到底無理。
ここは右岸の枝谷(ワサビ谷)の斜瀑を登ってから落ち口へ折り返す。
しかしここも途中に切れた場所があって微妙な感じ、
この谷の巻きは全体的に斜面の横切りが多くハンマーの突き刺しやカットが有効だった。

落ち口からは3M滝と5M滝の連瀑、ロープを出して左岸側壁をモンキークライムで突破。



3M、5Mの連瀑帯、左岸側壁をモンキークライムで登る

佐助から上流が『上ノ廊下』と呼ばれるゴルジュ帯、まだまだ気を引き締めて行こう。



廊下の奥に落ちる美しい15M滝

続いては15Mの美瀑、廊下の奥に落ちる姿はなかなか美しい。
ここは右岸巻きで上の4M滝も一緒に巻いてしまう。

更に8M滝の左岸を巻けば圧倒的な右岸壁、この谷は全然大人しくなる気配が無い。
高さは70mから80mくらいあってこれまた美しい20M滝が落ちる。
一見難渋しそうな滝やけど右岸壁の基部に踏み跡があって比較的楽な巻きだった。

ただこの辺りになると幕営地まで行く事に追われてしまいじっくり谷を味わえない感じになる。
なので記憶も曖昧だし詳細が思い出せない(^^;。



これまた美しい20M滝、右岸壁の基部を伝う

【大石滝(15:30)】 

まだまだ見せ場が続いて右岸から2本の滝が飛沫を上げている。
これが『大石滝』か!?、手前が支流の黒滝谷にかかる12M滝、奥が本谷にかかる10M滝、ここも素晴らしい空間だ。



大石滝、ここも素晴らしい、直進するルンゼから突破

突破は直進するルンゼに入って5Mくらいの滝を空荷で直登、
そこから折り返して谷に戻るが上はゴルジュでそのまま巻き上がる。
15M滝の左岸のリッジを登ればゴルジュは抜けた感じ。



15M滝は左岸のリッジから巻き抜ける

やっと空が広くなってきた。
テンバまでもうひと頑張りや!。

【2段25M滝(16:20)】 

しばらく平凡なゴーロを進むと突然2段25Mの大滝が現れた。
「まだ出ますか・・・」、ほんと最後まで緩みがない。
直登は無理そうやけど地形図のコンタもだいぶ広くなって来たから楽勝かと思いきやこれが今日一の大巻きやった。



2段25M滝、左岸巻きは今日一番の大巻きやった(汗)

ここも左岸から巻きに入るけどなかなか壁が切れずどんどん追いやられる。
小さいルンゼ状まで巻いてようやく壁が切れて折り返す。
難しい巻きではなかったが、終盤の疲労と重荷でかなり疲れた巻きだった。



この滝の上は景色が一変、どこでも泊まれそうな平地が広がる

そして8M滝の左岸の巻くと景色が一変、どこでもテンバになりそうな平地が一面に広がっている。
おおーっ、思わず感激の声が出た。
時間も17時過ぎ、他の二人はともかく私は疲労も限界や、
少し進んだ右岸に絶好の広場を見つけて今宵のお宿となった。

【Co1070m付近幕営地(17:05)】 

それにしてもテンバに着いて冷静になったけど、そう言えばまだ雨が降り出していない。
こりゃ焚き○が出来るかも!?。
いそいそとセッティングをして立派な宴会場が完成!、結局この日は雨に降られる事なく至福の時間を過ごせた。



今宵のお宿、雨にも降られず至福の時間を過ごす

・二日目

【Co1070m付近幕営地(8:25)】 

夜半にパラパラしたくらいで朝はまだ雨が降ってない。
雨予報はどっか行ったんやろか?。
予想外の天候に助けられてまったりした朝食タイムを過ごせた。

出発は8時半、歩き出すとすぐに雨が降り出した。
尾根歩きとか暑いなぁて思ってたからこれはこれで悪くない。



霧に煙る源流を詰めていく

すっかり穏やかになった源流に霧が立ち込めなんとも幻想的な雰囲気だ。
やがて左岸が草原になって谷は斜面へと消えて行く。
すぐ左手には縦走路が来ていた。

千石山への登りはコンタで200mくらいあってかなり辛い。
ここで山ガールとの出合いでもあれば元気回復するんやけど尾根は真っ白けと横殴りの雨。
この天気じゃ流石に来ないかなぁ、まあ暑くないからそれが救いやけど。

【千石山(9:40)】 

千石山からは笹ヶ峰へと向う。
瀬戸越の旧道はよく判らなかったけど踏み跡っぽいのは幾つかあった。
この辺りはまた天気の良い時にでも探索してみたい。



笹ヶ峰への稜線も真っ白、また天気の良い時に探索してみたい

【笹ヶ峰(10:25)】 

笹ヶ峰(p1367m)から東に派生する尾根で喜平小屋谷出合いを目指す。
ここからが今日の核心や。

尾根にはテープ類があるけど踏み跡が交錯してて迷いやすい。
特にCo1250mくらいで尾根形状が明瞭になるまでは読図力が試されるだろう。
まあ逆に言えばテープ類が全く無くなれば尾根を外した可能性が高いって事が判る。



尾根を確認しながらどんどん下る

地形図の破線道は途中で赤クラ滝谷の方に下っていてそれっぽい場所もあったたけどそのまま尾根を進む。
何度か修正しながら無事に喜平小屋谷との出合いに降り立った。

【喜平小屋谷出合い(11:55)】 

左岸の良く踏まれた山道から千石林道に登り返して後はのんびり林道歩き、
井戸谷の崩落現場はそりゃあ凄い惨状やった。
こんなにも山が削れてしまうなんて自然の力って凄すぎる。



井戸谷の崩落箇所、山がこんなにも削れるなんて・・・

【千石林道ゲート手前(13:45)】 

13時45分、無事に車まで戻って握手を交わす。
ほんとお疲れ様、そしてありがとう。

【神様が創った美術館】 

まだ時間もあるし最後はスメール温泉で身体を温めてから帰阪となった。

念願の奥ノ平谷はやはり噂に違わぬ素晴らしい渓谷でした。
特に下流部の廊下帯は神秘的空間の連続でまさに『神様が創った美術館』と言えるでしょう。
また中流域からの大滝群も豪快で素晴らしい、神秘から豪快、そして安息の源流へ。
遡行の醍醐味を全て網羅していると言っても過言ありません。

ただ今回は天気の都合等で飛ばし気味に行ってしまい遡行を楽しむ余裕がなかった。
もし次回行く機会あれば沢中2泊にして沢との対話を大事にしたいとこである。

また今回の遡行で自分自身に足りないものや泊装備の按配も見えてきた。
どうやら私は重荷になると極端に登攀意欲が落ちる傾向にある。
あと毎度の事ながら尾根道は全くと言っていいほど歩けない。
何を重視して何をカットするか、皆に迷惑をかけないためにもまだまだ精進と考察が必要である。

えっ、で結局山ガールには出会えたかって?。
そりゃ確かに山はいっぱりありましたよ。

山がある。山がある
山ガール・・・(^^;。

お後がよろしいようで。



遡行図




*遡行難度や下山難度のグレード目安、サイトの観覧方法については「初めてお越しの方へ」をご覧下さい。

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