完全なる豪渓、四ノ川下谷遡行。

渓谷の名称
下谷(四ノ谷)
山域(ピーク)
大峰(茶臼山)
渓谷の概要
下谷の名を聞いてピンと来る人が何人居るだろうか?。大峰の南部、茶臼山東面の水を集めて四ノ川へと注ぐ下谷(四ノ谷)。前半は圧巻の大滝群、中流域は寒気を感じる程の壮絶なゴルジュ、上部は岩溝の連瀑帯で巻く事もままならず直登で抜けなければならない。それだけに遡行の面白みが凝縮された完全渓と言えるが、登攀、巻き、ルート取り、ガレの処理、下山、全てにおいて難易度が高く安易な入渓はお勧めできない。
コースタイム
一日目
【下谷出合い】 08:55(林道を少し歩いてヌカ谷出合いへ降下)
【4段100M滝下】 10:50(豪壮な渓相は素晴らしいの一言)
【樋状20M滝下】 12:45(ここから難攻不落のゴルジュが始まる)
【簾状15M滝下】 13:30(ゴルジュの真っ只中を厳しい巻きで突破)
【Co700m二俣(泊)】 15:00(唯一の幕営適地か!?)
二日目
【Co700m二俣】 07:50(左俣へ入る。右岸の崩壊が痛々しい)
【Co805m奥の二俣】 08:10(10M滝の懸かる右俣へ入る)
【Co950m最後の二俣】 09:35(左俣は物凄いゴルジュ、CS3M枯棚の懸かるガレた右俣へ入る)
【茶臼山】 10:40(急峻な尾根を登ればドンピシャ山頂)
【雨谷山】 13:25(雨谷山へは険路、P1078m直下に岩場有り、天狗グラは絶景)
【カシ平】 14:10(カシ平へ植林の平坦地、要地形確認)
【登山口】 15:05(一気に下って四ノ川林道へと飛び出す)
【下谷出合い】 15:40(後は林道を歩くだけ)
ポイント
【★★★★☆(沢4級)】 ポイントは多数、最初の15M滝は右手ブッシュをロープ2Pで登るが見た目より悪い、4段100M滝は左岸ルンゼを詰めるが厳しく抜けの8M滝でロープを出す。植林帯に入ってから落ち口へ向かいルンゼ状の枝谷を越えて小尾根を回り込むと落ち口だった。更にスラブ壁に護られて樋状20M滝は左手から緩傾斜を探りつつ巻き登り壁の上に出て落ち口を目指すが途中で崩壊壁のトラバースがあって目も眩む高度感に肝が冷えた。そこからは完全なゴルジュ、簾状15M滝は右手から巻くが中々谷に戻れず際どいトラバースの末に10M滝下の河原に出る。眼前の10M滝は左岸ルンゼを少し登って比較的容易に巻いた。翌日も厳しい遡行が続く、奥の二俣を右俣に入ってからは連瀑に次ぐ連瀑を全て直登で切り抜ける。最後は急峻なガレ谷を谷の形状が無くなる直前まで詰めて、左岸尾根に入り石楠花の藪を急登すれば茶臼山のドンピシャ登り着く。とにかく全てが見所だが全てが厳しいです。
下 山
【★★★☆☆(道あるが険路)】 茶臼山から雨谷山、カシ平を経て四ノ川林道へと下る。エアリアに破線路があって一般登山道のようだが道標等は一切無く踏み跡も不明瞭な箇所が多い、更に雨谷山までの稜線は両岸スパッと切れ落ちているし岩場の下りもあるから疲れた身には辛いところだろう。雨谷山からはややバック気味、北東方向に伸びる尾根からP691mを経てカシ平を目指す。赤テープはあるが踏み跡は不明瞭、カシ平から南進する尾根に乗れば植林の中、道も明瞭になって四ノ川林道へと導かれる。後は林道を出合いへ30分。
装 備
一般遡行装備必携、ロープは8X30mを2本持参、登攀装備はカム類と確保支点にハーケンを使用した。廊下の全容を見るなら万全の装備で臨む必要があるだろう。
お勧め度
★★★★☆
参加人数
4人
所要時間
一泊二日
天候
晴れ時々曇(夜間に雨)
遡行日時
2008/04/26-27
地形図
大沼
写真室
無し
遡行図
その他情報
《フリクション情報》:普通 《ヒル情報》:巻きで遭遇 《温泉》:おくとろ温泉(500円) 《その他》:帰りに食べた『道の駅杉の湯』のうどん、たかが道の駅となめてたが意外と美味しかった。


《一日目》

【未だ見ぬ渓谷へ】 下谷の存在を知ったのは昨年の八月、R畑さんが「面白そうな谷を見つけたけど如何?」この一言だった。その時は「下谷?それ何処?」ってな感じで遡行する機会に恵まれなかったが、気になってた事もあって亀さんが調べるもネットでは有力情報が出て来なかった。

下谷は大峰南部、茶臼山東面の水を集めて四ノ川へと流れる谷だ。「一に池郷」「二に白川又」「三に前鬼」「四に四ノ川」と呼ばれるように四ノ川は大峰でも屈指の大渓谷に数えられる。実際地形図で確認しても雨谷山から茶臼山、笠捨山にかけての山域は至る所に岩壁記号が見られて実に興味深い、その山域に食い込む谷ならきっと期待を裏切らないだろう。

今年に入って泊り遡行の一発目に適した場所が無いか!?と思案していたところ下谷の名前が再浮上、各方面から情報を集めたところ30年以上前の遡行記録に行き当たったけど、その後は殆ど入渓者が居ないようである。記録によると谷の大半は廊下で構成されており手強いらしい、しかし大昔の記録だし現在はどうなっているか判らない。R畑さんにT中さん、Nちゃんに亀さん、沢好き4人が集まって未だ見ぬ未知の渓谷を遡行する事になった。

早朝6時半に杉の湯で合流、車を一台にして国道169号を南下、綺麗な不動トンネルを越えて『おくとろ温泉』を過ぎれば四ノ川出合いはもうすぐだ。そこから林道を15分ほど入れば広い空き地のある下谷出合い、橋の欄干には『四ノ谷』と書かれており下谷の名は恐らく『しのたに』が鈍ったものだろうとR畑さんは言う。その脇に駐車して『熊出没注意』の看板におののきながら準備を整えた。

【下谷出合い(8:55)⇒4段100M滝下(10:50)】 さあ行きますか!、下谷沿いの林道を奥へと歩きヌカ谷出合いで河原に降りる。流れは清冽で水量もまずまず、堰堤を右手から巻いて暫く進むと左岸が壁になって小滝が数個、どれも簡単に登れるが亀さんは新調した沢靴(赤石2)との相性がイマイチらしく「怖い信用出来ん(^^;」と言っている。今まで使っていた足袋タイプの物よりソールが硬く足裏感覚が掴めないらしい。やっぱり足回りは重要なのだ。


出合いに駐車して遡行開始! まずは小滝で足慣らし

谷は廊下の様相で左折するとビックリ仰天、前方はるか上空から白竜の如く大滝、落差100Mはあるだろうか!?、こんな大滝はそうそう見れるもんじゃない、のっけから予想以上の出迎えにみんな「凄い」「素晴らしい」を連発している。しかしこの大滝、実は支流の滝で本谷は90度右折して15M滝を落す。スッキリとした直瀑で中々のべっぴんさん滝だ。


白竜の如く大滝のお出迎え 15M直瀑は右手ブッシュから突破

さて突破だが直登は無理で右手のブッシュ帯に活路を求めた。R畑さんのリードでロープを伸ばし中間辺りでピッチを切る。そこから滝頭へ寄って行くが回り込みは高度感が凄い、登る前は容易そうに思っていたが見た目よりもズルズルで渋い内容だった。谷は一旦穏やかになるが新緑の緑が眩しく透明度の高い水面に反射して心地よい。やがて遠くに瀑布が望まれ近付くと、「す、凄い!」幾重にも重なった連瀑帯がその姿を現したのだ。山の斜面をそのまま滝にしたような豪快な連瀑で相当な落差である。思いも寄らない絶景にただ唖然と立ちすくむ。


斜面がそのまま滝になった4段100M滝 左岸ルンゼの攻略は難攻を極めた

【4段100M滝下(10:50)⇒樋状20M滝下(12:45)】 この滝の攻略も直登は厳しく巻くしか手は無いのだが両岸共に高く大巻きが予想される。どちらから巻くか?、左岸に入るルンゼが登れそうなので意を決して取り付く、しかし上部に行くほど傾斜が強くなるし浮石だらけで気が抜けない、上に植林帯が見えて安全圏までもうちょいなのだが難渋する一行をあざ笑うかの様に8M滝が立ち塞がる。ここはもう直登しかない、R畑さんが渾身の登り(カム×2)で突破、後続を引き上げた。

植林帯は倒木の山で右往左往したがさっきの緊張感からすれば屁でも無い、仕事道っぽい踏み跡を伝い滝頭の方へ寄って行く、途中ルンゼを一本横切って尾根の鼻を越えるとピッタリ落ち口に到着、滝下の高度がCo305m、滝上がCo405m、となれば4段100Mの大滝で1時間15分を費やす苦しい大高巻きだった。

滝上は綺麗なナメ床が続いて巻きの労を癒してくれる。しかしその穏やかさも一時の事、釜を持った2M滝を皮切りにゴルジュの谷へと変化した。3M、3Mと越えて8M滝は左手を登るが緊張する。前方は明るくなって廊下を抜けたか?と安堵するが、そうは問屋が卸さない、巨大なスラブ壁が取り囲む中を浸食して樋状20M滝が落ちていた。


ゴルジュの連瀑帯を進む スラブ壁に護られた樋状20M滝

【樋状20M滝下(12:45)⇒簾状15M滝下(13:30)】 辺りを見渡しても周囲は壁、こいつもまた難渋しそうな予感がする。ワイドに広がった右岸壁の上にバンドがありそうなのでコレを狙うしかない、左手の樹林帯に入って大きく巻いて行く、上手い具合に壁上のバンドに出たが滝の鼻を回り込む手前で崩壊壁に遮られる。しかしここを渡るしか突破の道は無い、見れば川床は遥か下で落ちれば確実な死が待っているだろう。ここもR畑さんがトップで行く、崩壊壁は不安定でプロテクションは取れない、それでも何とか安全圏に到達、後続も続きラストは上部立木からの確保に切り替えて事無きを得た。

谷に戻ると「ふーっ」そんな言葉しか出なかった。が、前方には簾状15M滝がスルスルと滑り落ちる。流れの美しさとは裏腹に両岸はまたも壁・・・、遡行記録も殆ど無い、下谷と何所にでもあるような名前のこの渓に、これ程の滝が内蔵されているとは一体誰が想像し得たであろうか。


決死の崩壊壁トラバース 簾状15M滝は優美な流れだが・・・

【簾状15M滝下(13:30)⇒Co700m二俣(15:00)】 この滝は右手から巻き登りルンゼを一本跨いで滝頭へと寄って行く、しかし滝上は深く抉り込まれた溝状で全く取り付く島が無い、川床への下降を諦めてそのまま斜面をトラバースして行くが立木頼りの急斜面で気が抜けない、幾つかの滝を見下ろしながらジワジワ進んだが谷は90度左折して10M滝、左岸が極度に立っていて前進が不可能となってしまった。

一か八か懸垂で谷床へ降りる方法も考えたが時間を食いそうだったのでパス、少し戻りながら斜上して小尾根に乗ってもう一段上の斜面を巻いた。ようやく戻れた谷床は相変わらずの廊下だが左岸から傾斜の緩いルンゼが入る二俣で小石の河原も見える。本谷は10M滝を落としているが今までのような閉塞感は無い、ここは左岸ルンゼを少し登って壁の切れ目から容易に巻けた。


悪絶な廊下内は前進不能 10M滝を左岸ルンゼから巻く

滝上はナメ床と明るい空、どうやら廊下は抜けたようだ。やや荒れた渓相だが平坦地もある。時間はまだ15時前だがそろそろ幕営地を探さねばなるまい、予想通りCo700m二俣付近に適地を見つけて今宵の宿とした。さあ久々の宴会、やっぱり沢泊まりはこれがなくちゃ始まらない!、R畑さん、T中さん、沢の大先輩方の武勇伝を肴に下谷の夜は更けて行った。


Co700m二俣は今宵のお宿 気持ちよい快晴の朝

《二日目》

【Co700m二俣(7:50)⇒奥の二俣(8:10)⇒最後の二俣(9:35)】 夜半に少し降られたが起きてみれば快晴の空、今日は暑くなりそうだ。のんびり朝を過ごして8時に出発、左俣を進む。右岸壁がずっと崩壊していて砕石が谷を埋めるが通行に支障な無い、傾斜の強いゴーロを登ってCo805mが奥の二俣、右俣は10M滝、直進する左俣は荒れたゴーロとなっていた。地形図を見る限り左俣を進めばコルまで楽に行けそうだが茶臼山に直接登りたい一行は右俣をチョイス、入り口の10M滝を左手から小さく巻けば谷の様相が一変、岩溝状の中に滝が連続して懸かるのが見えた。

両岸はボロボロの壁が続いて巻きで逃げるのは不可能、ここは直登で勝負するしかない。5M滝を登って次の7M滝はR畑さんがリード、更に15M滝は左手の張り出しをNちゃんがリード、8M斜瀑を楽に越えて滑り気味の5M滝は亀さんがフリーで登り後続を確保した。その上は小さい二俣で右俣を選択、水もチョロチョロになってガレ谷の様相だ。そこから階段状の谷床をもう少し進んで一行は唖然とした。前方に寒気のするようなゴルジュが見えたのだ。両岸の高さは50m、暗く陰鬱な内部には30M滝が懸ってとても中央突破出来る代物じゃない、「ここから抜け出せるんやろか?」一瞬不安になったが幸いな事に手前が二俣になっていて左岸からCS3M滝を伴ったガレガレのルンゼが入っている。ここならまだ進めそうだ。


出てくる滝は全て直登勝負 15M滝は左手張り出しを登る

【最後の二俣(9:35)⇒茶臼山(10:40)】 しかしこのルンゼも厄介で浮石のオンパレード、騙し騙し高度を上げて行くが上部に行くほど傾斜が増して危なっかしい事この上ない、びっしり苔の生えてる砕石がいとも簡単に落ちて行く様を見ると、人はおろか獣でさえもこの地に足を踏み入れて無いのだろう。


岩溝状の源流部を登る 最後のガレは落石の巣窟

歩けるギリギリまでルンゼを登り壁の切れたところから右手の笹薮を漕いで尾根に出る。尾根は急傾斜だが幸いに壁は無い、石楠花の藪を急登して行けばぴったり茶臼山の山頂だったv。

【茶臼山(10:40)⇒雨谷山(13:25)】 下山は茶臼山から雨谷山、カシ平を経て四ノ川林道へと下るのだが、実はこの道も結構手強いらしい、エアリアでも険路と書いてある。まずはテープを頼りにP1078mを目指す。途中、境界杭のある西ノ峰への分岐を見送りピークからは岩場の急斜面で普通なら鎖やトラロープがあってもおかしくない箇所だろう。そこを過ぎると痩せ尾根になるが快適な道が続く、次のP1015mを過ぎれば東面に天狗グラの大岸壁、恐らく300mくらいの高さがあるのではないだろうか!?。やがて植林が寄ってくると穏やかな尾根道となって少しの登りで雨谷山に着いた。


やっと茶臼山に登れました 圧巻の天狗グラは高さ300m?

【雨谷山(13:25)⇒カシ平(14:10)⇒登山口(15:05)⇒下谷出合い(15:40)】 雨谷山からカシ平へはややバック気味に北東方向へ進むのだが判り難い、P691mまではコンパスと地形図必携だろう。P691mまで来れば良く踏まれた登山道となり植林に覆われたカシ平は注意してないと通り過ぎてしまいそう。そこから南に振って明瞭な道を一気に下れば四ノ川林道のモノレール小屋前に出てきた。後は林道を30分歩いて下谷出合い、遡行の成功を祝して堅い握手を交わした。

【下谷は素晴らしき渓谷だった】 いやー楽しくも厳しい遡行でしたわ。下谷は殆ど記録の無い未知の谷やった訳だが、付近の名立たる大渓谷に勝るとも劣らない素晴らしい渓谷だった。尾根上は植林があって人臭い部分もあるが渓中は人の痕跡も皆無だし、下部の大滝、中流域の大ゴルジュ、上部は荒々しい原始の様相が剥き出しになっていて遡行の魅力が全て詰まっていると言っても過言では無い。

もっと多くの遡行者があってもおかしくない秀渓だが、技術的、体力的にも難易度が高く、おき楽気分の遡行には向かないだろう。無我夢中で過した二日間、心に刻まれる一本となった。

最後は硫黄臭の漂う『おくとろ温泉』で疲れを癒して帰阪の徒についた。ご一緒してくれたR畑さん、T中さん、Nちゃん、そして亀さんと素晴らしき自然に感謝。m(__)m



*遡行難度や下山難度のグレード目安、サイトの観覧方法については「初めてお越しの方へ」をご覧下さい。



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