滝上の別天地、上多古川で滝見遡行。

渓谷の名称
上多古川本谷
山域(ピーク)
大峰
渓谷の概要
大峰山系の山上ヶ岳北東面に深く切れ込む上多古川は多くの支流を持ち絶好の遡行フィールドを展開する。中でも本谷は数多くの名瀑と廊下を連ねてスケールの大きな遡行を満喫出来る秀渓だ。関西の教本的な谷として入渓者も多く悪場には明瞭な巻き道が付いているが急峻な部分も多くルート取りには注意したい。また、山上ヶ岳は現在も女人禁制であるためメンバーに女性を含む場合は配慮が必要である。
コースタイム
一日目
【矢納谷出合い】 09:40(林道は伊坪谷出合いから500m付近で通行止めだった)
【ブナ又出合い】 10:10(天竜ノ滝上から遡行開始、ブナ又出合いまでは平凡)
【煙突ノ滝下】 12:00(数々の名瀑と廊下に酔いしれる)
【竹林院谷出合い】 13:20(廊下を抜けてからも小滝が続く)
【六字ノ滝下】 13:40(六字ノ滝までは空荷で20分弱)
【阿古滝谷出合い】 15:10(大岩が多く重荷にアップダウンが辛い)
【阿古滝上の幕営地】 15:50(阿古滝は滝横左手から明瞭な巻き道有り)
二日目
【阿古滝上の幕営地】 07:30(滝上の別天地は最高の幕営地だった)
【矢納谷出合い(駐車地)】 09:20(阿古滝道からワンステ尾を伝って下山)
ポイント
【★★★☆☆(沢3級)】 直登不可能な滝が多く巻き中心の遡行となる。双龍ノ滝は右手巻き、洞門ノ滝は左手リッジからの大巻き、幸次郎窟の廊下は入り口手前から右手を巻く、続く8M斜瀑はロープを出して左手を直登、煙突ノ滝は左手ルンゼから巻き上がるがトラバースに高度感がある。どの滝にも明瞭な巻き道が付いているが廊下の発達した谷だけにルート取りには要注意。見所は数々の名瀑群と原生林の森、特に阿古滝の上部は別天地と言った感じで遡行の労を癒してくれるだろう。
下 山
【★★☆☆☆(登山道あり)】 下山は阿古滝道からワンステ尾の尾根道を伝う。阿古滝道は阿古滝上(Co1210m付近)から斜面をトラバースして緩やかに下る水平道、踏み跡は明瞭だが何箇所か崩壊しているので注意が必要だ。Co1000m付近でワンステ尾の鼻に乗って、そこからは尾根通しの道となる。急傾斜な部分もあるが明瞭に続いて矢納谷出合いへと導いてくれるだろう。(但し地形図の破線道とはルート取りが違うように思う)
装 備
一般遡行装備必携、ロープも必携。今回は煙突ノ滝手前の8M斜瀑と阿古滝谷出合い手前の6M滝を絡む時にロープを使用した。
お勧め度
★★★★☆
参加人数
2人
所要時間
一泊二日
天候
晴れ
遡行日時
2007/09/22-23
地形図
洞川
写真室
無し
遡行図
その他情報
《フリクション情報》:やや滑り易い 《ヒル情報》:見なかった 《温泉》:かもきみの湯(500円) 《その他》:特に無し


《一日目》

【滝の宝庫、上多古本谷へ】 先週に続いて上多古川流域にやってきた。先週の伊坪谷、実は本谷遡行への布石として地形を把握する予行的な要素も持ってたのだ。今回遡行する上多古本谷は古くから岳人に親しまれている大峰山系屈指の名渓で名のある滝も多く自然と期待も高まるところ。

朝6時半に集合して吉野を目指す。この界隈の谷は比較的遅い目出発が可能なので気が楽だ。上多古林道に入って伊坪谷出合いの赤い橋を過ぎるがこの林道は最後1Kが荒れたダートとなっていて普通車にはいささか厳しいものがある。どこに駐車するか懸案だったが500m程進んだところで通行止めの看板、ゲート横にスペースがあるがこれはUターン用なので少し戻って路肩に駐車した。

【矢納谷出合い(9:40)⇒ブナ又出合い(10:10)】 遡行準備と整えて林道を20分歩けば林道終点でもある矢納谷出合い、金網状の橋を渡って暫くは登山道歩きとなる。今日は宴会モードの沢泊装備なのでいつもより荷が重く既に汗まみれ、早く沢に浸かりたい一心で『山ノ神』の祠横から細い踏み跡に入った。

踏み跡が通じていたのは『天竜ノ滝』を越えて少しの地点、6M斜瀑が涼しげに落ちていた。早速流れに入り上の8M滝は右手の階段状を登る。ここは簡単な岩場だが練習用と思われるボルトが連打されていた(^^;。谷中は幅広く歩くどこでも歩けると言った感じ、暫くのんびり進めば左岸から流れが入って『ブナ又出合い』に到着。ここからが実質の遡行開始となる。


林道の広くなった場所に駐車 ブナ又出合いまではのんびり遡行

【ブナ又出合い(10:10)⇒煙突ノ滝下(12:00)】 右の本谷に入って綺麗なナメ床を伝うと多段多条の8M滝が出現、『多古ノ滝』だ。少しまとまり無い感じの滝だがお楽しみタイムの始まりにワクワクしてくる。ガイドには「右手から巻く」とあるが見ていると左手の流れが登れそう。ただ荷物が重いから空荷で一段登ってシュリンゲで荷上げ、後は余裕で越えた。

続いては2条10Mの『双龍ノ滝』、なるほど!上部で分かれた2本の水流を龍に例えてる訳やね!。ここは直登も可能そうだがちゃんとした装備が要りそうでセオリー通りに右手のしっかりした巻き道を伝った。と言うか実は滝見宴会モードだったのでハンマーやハーケン類を車残置してきて何とも軟弱なこってすわ(^^;。


多条多段の多古ノ滝は左を越えた 双龍ノ滝10Mは右手に明瞭な巻き道

そして間髪入れずに『洞門ノ滝』が迫る。落差43M、本谷随一の長瀑で水量も多く迫力充分、間違いなく大峰山系を代表する滝の一つであろう。ここは左手から張り出すリッジを登れば明瞭な巻き道に出るが終始飛沫を受ける場所なのでスリップには注意したい。リッジ上からは岩壁を左手に回り込んで滝上に抜けた。


本谷随一の景観を誇る洞門ノ滝は 左手リッジを登れば巻き道に出る

谷は洞窟のようなS字ゴルジュとなってドンツキに2段12M滝を懸ける。『幸次郎窟』だ。釜も深くて突破は厳しそう、ここは廊下の入り口まで戻って右手の巻き道を進む。最初は明瞭な巻き道だが上部のトラバースに入ってからが切れていて油断は禁物だろう、続く10M滝も一緒に巻いて廊下から開放された。

降り立った谷は明るい岩床にナメが伝い一息付くにはよい所、振り返れば深いV字峡に映える緑が目に眩しいだろう。谷は右折して8M斜瀑が待ち受ける。巻き道らしい踏み後が見つからないのでここは直登勝負。ロープを引いて左手を斜上、結局ランナーは取れなかったが不意のスリップさえ気を付ければ恐らく大丈夫だろう。そして遂に『煙突ノ滝』に辿り着く。


幸次郎窟の抜けに2段12M滝 8M斜瀑はロープを引いて左手直登

【煙突ノ滝下(12:00)⇒竹林院谷出合い(13:20)】 煙突ノ滝は物凄いゴルジュの中にダイブする20M滝でその本体を拝むには深く大きい釜を泳がねばならない、とは言え泳いだところで全く手の出ない滝なのも事実で思案したが釜前から見学するに留めた。それにしても上多古本谷は予想以上にスケールの大きな渓相が続くので全く飽く事を知らない。

突破を谷中に求める事は不可能で少し戻った左手ルンゼから巻き上がる。踏み跡はあるが急傾斜で高度感も充分、まあロープを出す程では無いし私もMちゃんもこの夏は悪い巻きを一杯経験したのでこれくらいなら許容範囲〜!!、まあ実際はちょっぴりビビッてましたがお許しを(^^;。

で、話は戻り煙突ノ滝上にもう一つ10M滝があってこれも一緒に巻いて河原に降りる。谷はやや広がって大釜に15M滝が滑り込む、これが『多治良渕』だろう。今までの険悪さは也をひそめ美しい景観を見せる。しかし直登は難儀そうなのでここも右手を巻いた。何も考えず巻き道を伝っているとどんどん登って行くので適当な斜面からトラバースする方がスムーズだと思うのだがどうでしょう!?。


廊下に落ちる煙突ノ滝を覗く 15M滝の多治良渕は右手巻き

これで連瀑帯は抜けた模様、谷幅はぐっと広がって大岩のゴーロになった。周囲は森の主とも呼べるような大木が何本もあって素晴らしい雰囲気だ。岩間に落ちる滝群を右へ左へと交わしながら暫し進むと左岸から階段状の8M滝が流入、その遥か上方には大滝が見えて右岸にも細流ながら25M滝が懸かる桃源郷、ここが『竹林院谷出合い』であろう。

【竹林院谷出合い(13:20)⇒六字ノ滝下(13:40)⇒阿古滝谷出合い(15:10)】 今日のお題は滝見遡行なので荷物を置いて右俣大滝を見学に行く。ゴーロと小滝を交わしながらの道のりだが悪い箇所は無い、20分程で大岩壁に落ちる『六字ノ滝』下に辿り着いた。落差は2段50M、名前の由来は仏教関係からだろうか?、青空と涼しげな飛沫に思わずシャワーを浴びたくなるがこの谷は上部に大峰宿坊があって生水厳禁の悪評がある。故に見ているだけが賢明だろう(^^;。


大岩壁を落ちる六字ノ滝 上部宿坊故に生水摂取は厳禁

竹林院谷出合いに戻って遡行再開、通せんぼするCS6M滝の右端を抜けて上流を目指す。地形図を見ていてもう悪い箇所は無いかな?と思っていたが谷はまた狭まって巨岩の隙間に幾つもの岩間滝が懸かる。どの滝も大岩と側壁の際を登って行く訳だが重荷と窮屈さで中々しんどい登り、何度か荷上げをして乗り越えた。

やがて前方に赤ちゃけた8M滝、左手から登るが上で泥壁に阻まれた。周囲を見渡すと眼前には6M滝、その上に二俣があってどうやら『阿古滝谷出合い』のようだ。暫く突破を思案していたがロープを付けて泥壁を登り出す。嫌らしそうに見えた斜面もいざ取り付くと木の根があって容易な突破、Mちゃんもサクサク登ってきた。そして出合いに懸かる6M滝も張り出しを伝って阿古滝谷へと入る。

【阿古滝谷出合い(15:10)⇒阿古滝上の幕営地(15:50)】 ここからも急傾斜のゴーロでしんどいが前方に見えるワイドな壁が目的地を示唆してくれるので元気が湧いてくる。やがて視界が広がると、そこには見上げるばかりの大岩壁と降り注ぐ大滝、これが『阿古滝』50Mだろう。水量が少ない為か下部は霧雨状となって迫力には乏しい、しかし荒々しい大岩壁と相反する優しげな飛沫は苦労してここまで来た私達の労をねぎらうかの如く包んでくれた。


阿古滝谷出合い手前の8M滝 大岩壁に降り注ぐ阿古滝50M

何時までいても飽きない場所だがこんな所でお泊りする訳にもゆかず突破を思案する。とりあえず滝際の左手斜面を登って岩壁の基部に出ると壁の高さは後20M程だが直登は厳しそう、見渡すと左手にビル程もある巨岩、岩壁との間に隙間があって下って行く踏み跡が見えた。巻き道か登って来た道か判らなかったがこれしか見当たらないので伝って行くと上手い具合に壁の切れ目があって難なく上部へ抜ける事が出来た。

そこは今までの荒々しさは消えうせ、なだらかな斜面に自然林が広がる滝上の別天地、横切ってきた阿古滝道を進めばすぐに地蔵様の鎮座する阿古滝落ち口に到着。穏やかな流れに平坦地や河岸段丘もあって幕営に最適地、時間も16時と頃合だったので今宵の宿をここに決めた。

宴も進んで空には十五夜前のお月様、木々の隙間からムーンライトが差し込んで斜面を照らす。なんとも幻想的な光景に重荷を担いででもここまで来た甲斐があったと言うものだ。上多古の夜は静かにふけていった。

で、少し余談なのだがシェルターに入って就寝中、何だか気配を感じて目が覚めた。時間は2時過ぎくらいだったと思うが耳を澄ませば遠くの方で誰かの喋り声、人か獣か判らぬが会話のようにも聞こえてくる。と思ったら突然その声がシェルター側まで近づいてきた(@_@)。足音も無く瞬間的にやってきたので少しびびったが此方は半分夢見心地で訳が判らない、何語かも判らない会話とも取れない声がシェルターのすぐ外で聞こえていたが暫くするとかき消すように静かになった。あの声はいったいなんだったのだろう?。あの時間に山を歩く外人さんでもいたのだろうか?、それともここは修験の聖地山上ヶ岳のお膝元だけに神様がパトロールにでも来ていたのだろうか??、いずれにしても不思議な出来事であった。(Mちゃんは爆眠で全く気付かなかったらしい(^^;)


阿古滝上は滝上の別天地 秋の先取りでキノコが一杯あった

《二日目》

【阿古滝上の幕営地(7:30)⇒駐車地(9:20)】 山の朝は早い、6時前に外に出していたザックの中から目覚ましが鳴って渋々起きる(^^;。今年の沢泊は大抵二日目が曇りか雨だったが今日は晴れのようだ。って後は下山するだけなんやけど・・・。のんびり食事をして7時半に下山開始、阿古滝道を下って行く。

阿古滝道は上多古本谷の右岸上部をトラバースしながら進む水平道で道形ははっきりしているがルンゼの横切る地点で崩壊があって危険箇所かある。落ちたら止まらない部分もあるので油断は禁物だ。少しづつ高度を下げてCo1000m付近でワンステ尾の鼻に乗った。そこからは尾根通しの下りでやや急斜面もあるが快適な登山道、1時間半くらいで矢納谷出合いへと戻り着いた。後は林道をテクテク歩いて車までは20分、車止め横のスペースには数台が駐車中、後から来た車はどこでUターンするんでしょうね〜(^^;。

【大滝と神々の山に感動】 先週の伊坪谷に続いてこの界隈への入渓だったが予想以上のスケールと美しさに大満足の遡行であった。幕営地にした阿古滝周辺の山容も素晴らしい。泊装備の重荷から登攀具を減らしたために無理は出来なかったがちゃんとした準備をすれば幾つかの滝は攻略出来そうである。再訪したと思う谷がまた一つ増えた。

最後は『かもきみの湯』で汗を流して帰阪となった。今回も充実の山行を共にしてくれたMちゃんと大峰の自然、アクシデントも無く下山させてくれた山の神にも感謝。m(__)m



*遡行難度や下山難度のグレード目安、サイトの観覧方法については「初めてお越しの方へ」をご覧下さい。



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