渇きの牢獄、エチガ谷遡行。

渓谷の名称
エチガ谷
山域(ピーク)
鈴鹿(杉峠)
渓谷の概要
鈴鹿の北部西面、高室山付近から流れて芹川へと注ぐエチガ谷は出合い付近に観光洞の『河内風穴』があるのでピンと来る人もいるだろう!?。出合い付近は驚く程豊富な水量を誇っているが全て湧水であり核心部は全くの枯れ谷となっている。廊下状の場所も多いが圧迫感は無く遡行としての面白みは少ない、しかし石灰岩の作り出す奇妙な光景を一見するのもよいだろう。
コースタイム
【駐車地】 09:00(まずは河内風穴まで車道歩き)
【河内風穴】 09:40(国内有数の鍾乳洞らしい)
【岩屋(洞穴)】 10:40(谷は殆ど伏流、倒木で歩き難い)
【吉ヶ谷出合い】 11:45(2段8M滝と三本杉を過ぎれば出合いはすぐ)
【杉峠】 12:15(吉ヶ谷沿いの踏み跡を行く)
【向ノ倉】 12:50(今は廃村、井戸神社の大カツラは必見)
【駐車地】 13:20(ヒルチェーック!3匹ゲットv)
ポイント
【★★☆☆☆(沢1級)】 概ね伏流のゴーロと枯滝で問題となる箇所は無い、最初の10M滝は右手から巻くが中盤と後半にある廊下内の滝は容易に直登可能、ただし谷は倒木多く荒れた感じで歩き難い。見所は河内風穴と石灰岩の浸食が作り出す異様な世界。
下 山
【★☆☆☆☆(登山道あり)】 吉ヶ谷から杉峠までの道は倒木に埋まる箇所もあって微妙、杉峠から向ノ倉へ続く道は古の生活道で自転車でも走れそうな立派なものだ。
装 備
伏流しているので登山靴でも可、一般遡行装備も不要、水流があると難度が変る可能性あり。
お勧め度
★☆☆☆☆
参加人数
2人
所要時間
約4時間半
天候
晴れ
遡行日時
2007/05/27
地形図
高宮
写真室
無し
遡行図
その他情報
《フリクション情報》:普通 《ヒル情報》:生息 《温泉》:十二坊温泉:600円 《その他》:河内風穴入洞料:500円


【気になる谷】 鈴鹿のバイブル『鈴鹿の山と谷』を見ていて気になる谷を発見、第一巻記載の『エチガ谷』だ。それによると「井戸底のような回廊」「浸食された石灰岩の滝場」、殆ど記録の無い谷だがなんだか面白そうである。思いを馳せていると気持ちも入ってきて何としても行きたくなった。

Pちゃんと朝6時半に集合して鈴鹿を目指す。国道307号から『河内風穴』の案内に導かれて芹川沿いの道を進む。10分も走ると前方に『芹谷屏風岩』の岩壁、それを過ぎた辺りの広場で駐車した。ぼちぼちと準備を整えてるとヘルメットの上で大きなヒルさんが手招きしている。先週崩レ俣谷で見たやつよりも立派でこの先が楽しみだ(^^;。

【駐車地(9:00)⇒河内風穴(9:40)】 まずはエチガ谷の入渓点でもある河内風穴を目指して車道歩き、芹川の清流が美しい。30分程歩けば八幡神社の鳥居と風穴の料金所、入洞料500円を払っておじさんに「今年ヒルはどうですか?」と訪ねれば「もう出てるけど数はまだ少ない」との答え。暫しそんな話をしていると前方からケイビングスタイルの若者数人がやってきた。そう河内風穴はケイビングのメッカでもあるのだ。


まずは河内風穴まで車道歩き エチガ谷の出合いは豊富な水量

【河内風穴(9:40)⇒岩屋(洞穴)(10:40)】 遊歩道を進むとすぐに鉄橋でエチガ谷を渡る。流れは豊富で清冽、苔蒸したゴーロと新緑がみずみずしい。風穴はそこから階段を登ってすくだ。河内風穴が観光洞として開放されているのは入り口から200m程、広い空間に圧倒されるが風穴の名が示すように鍾乳石の発達は殆ど見られない。しかし実際は総延長6000m以上を誇る国内屈指の大洞窟で最奥部には深さ数十メートルの地底湖や無数の鍾乳石が存在すると言う。

風穴の観光を終えていよいよ遡行開始、谷に入るとあれほど豊富だった水量が実は全て湧水、いきなり伏流の枯谷になってしまう(予想はしてたがちょっとガッカリ)。石灰岩の巨岩が埋まるゴーロを進んで行くが水が無いので早くもオーバーヒート。


圧倒空間の河内風穴 豊富な水量がいきなり枯れる(^^;

時折懸かる枯滝(枯棚)は浸食の痕跡が顕著でいったいいつ水が流れてるのか?、やがて両岸立って10Mの枯滝、釜も深いが水は無い(^^;、直登は難しいそうで右手から巻き上がる。前方には極度に狭まったS字状の廊下、中には3M、4Mの枯滝とその間に深く浸食された釜(水が無いので窪地状)、ここに立って上を見ればまさに井戸の底だが滝の突破自体はホールド充分で問題無いだろう。


10M枯滝は右手から巻く 井戸の底から這い上がる

井戸底を抜ければ今度は倒木の嵐、何故か真新しいハシゴが架けてあって利用、意外と人が入っているのか??。続いては3Mの枯滝、この滝は中央に尖った岩が突き出ていて面白くまるで『ミニ槍ヶ岳』のようだ。暫くはゴーロと枯滝の繰り返しだがこの谷の枯滝は釜を伴っているものが多く一段降りてから滝を登る事になるので意外と疲れてしまう。

それにしても水音の無い谷は異様である。何だか異臭がするので足元を見れば鹿の死体(^^;、迷い込んで出られなくなったのか自らの最後にこの場所を選んだのか・・・。何れにしてもこの谷は乾いた牢獄の様であり生ある物を蹂躪し兼ねない、やはり命には水が必要なのだ。


谷に聳えるミニ槍ヶ岳 4M枯滝、この手前に鹿の死体が

【岩屋(洞穴)(10:40)⇒吉ヶ谷出合い(11:45)】 やがて右岸に白い壁が立つとぽっかりと空いた洞欠、資料によると岩屋と呼ばれる洞穴で中は10畳程の広さだと言う。中に入ってみると天井にはツララ状の垂れ下がりが二本、ガバっぽいのでボルりたくなったが気味悪い雰囲気なので先を急ぐ(^^;。


岩屋と呼ばれる洞穴 水があれば綺麗やろな〜

そして浸食された3Mナメ床を越えると突然水流が戻った。しかもかなりの勢いだ。一体この水はどこへ消えるのだろう?、更にこの水、無色透明でめったいない美しさである。今までが枯谷で暑かったこともあり嬉々として浸かりながら進む、河原の石コロにヌメリが無いことからも水の清冽さが伺える。

水も出て小川状となってきたのでもう終りも近いかなと思っていたらまた突然流れが消えた。と、言うことは今の流れは全て湧水か!、そりゃ綺麗なはずだわ。前方には袋小路のような廊下、ハングした左岸壁の裏に2段8M枯滝が懸かる。一見険悪そうなこの滝場もホールドは豊富で直登可能、ここは中々面白いところだった。


無色透明の清流はやはり湧水だった 立ちはだかる廊下と2段8M枯滝

廊下を抜けると右岸に杉の巨木が三本(よく見れば四本)、古の杣人達は交通の要所に杉を植えたと言う、さすれば分岐も近いのだろう。案の定少しの歩みで吉ヶ谷出合いに到着した。

【吉ヶ谷出合い(11:45)⇒杉峠(12:15)】 ここで本流を離れて吉ヶ谷を詰める。谷中は藪がうるさいので左岸の山道を行った方が楽だろう。上部で若干崩れている部分あるが概ね続いており鞍部へと導いてくれた。鞍部は杉峠と呼ばれここにも杉の巨木が鎮座、よい目印となっている。


穏やかな吉ヶ谷出合い 杉峠の巨木

【杉峠(12:15)⇒向ノ倉(12:50)⇒駐車地(13:20)】 情報では杉峠より向ノ倉集落へ向う生活道が通じてるとのことであったがどうも見当たらない、仕方なく適当な尾根に目星を付けて強引に下ると左手から立派な山道、そうか!ここは杉峠の手前からトラバース気味に尾根に乗るのが正解だったようだ。後は良く踏まれた山道を30分で向ノ倉集落(今は廃村)、滋賀県最大と目される『井戸神社の大ケヤキ(幹周11.6メートル)』を見学して駐車地へ、九十九折れの林道から芹川を渡り広場に戻ると怪しい車で一杯、見れば「FIVE.TEN」や「プラナ」の文字、この広場は芹谷屏風岩の駐車地でもあったようだ。しかしヒル君も多いのに軽装のクライマーさんは平気なんだろうか?。


向ノ倉の集落跡 井戸神社の大カツラは必見

【渇きの牢獄】 今回の遡行、エチガ谷を当りか?外れか?と聞かれれば外れ谷の部類に入るかも知れない。倒木や落石が多く歩き難いのである。これは水流が無いので谷へ落ちた物体が流される事無く留まるからだろう。やはり谷は多少なりとも水流が必要だと言うことを再認識出来た。しかし石灰岩の浸食が作り出す奇妙な光景は一見の価値ありで乾いた谷の異様さに滑車を懸けている。また河内風穴や大カツラ等の見所も多く山歩きとしては充分な価値が見出せる。

最後は十二坊温泉で汗を流して帰阪となった。本日もお付き合いしてくれたPちゃんと鈴鹿の自然に感謝。m(__)m



*遡行難度や下山難度のグレード目安、サイトの観覧方法については「初めてお越しの方へ」をご覧下さい。



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